FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年1月7日放送

津市大門。
ここに江戸時代から続くお餅屋さんがあります。
創業150年、今回は津市『玉吉餅店』の九代目加藤俊次さんがお客様です。

さな頃から餅を搗く音で育ってきた

創業は口伝ですが、元治元年…江戸末期と言われています。
津に昔から伝わるお菓子『けいらん』を津のお城の家老に献上したという記録が残っています。
お年寄りの方が買いに見られたときに、「小さな頃に買いに来たよ」と言ってもらいます。
懐かしいと。
『けいらん』は津界隈くらいですかね。
多気の方に行くと、『まつかさもち』という名前に変わりますし、亀山の方だと『志らたま』となり、一粒だけ米が乗るようになります。
一度は就職したのですが、やはり継がなきゃいけないのかな、という思いは頭の片隅に薄々ありました。
それから、小さな頃からお餅を搗く音で育っているので、自分の代で終わらせたくないと思い、会社をやめて、入社しました。
今は完全予約制でお正月用のお餅を作っています。
だいたい年末の26日から始まって、30日までの5日間は毎朝2時くらいからお餅を作っています。
ずっと大門で商売をしているので、まわりの方はもちろん、ここから離れた郊外に住んでいる方でも、親の代からと買いに来ていただいたり、まわりのお寺さん、鏡餅が必要ですから、そういう方たちからの注文もあります。
飾るのはだいたい、床の間に大きいのを飾っていただいて、あとはお祀りしてある神様や仏様に小さなものを飾ったり。
昔は商売されているされている方は商売ものの上に全部飾りました。
うちでも、セイロや餅つき機の上などにも全部鏡餅をお供えしますね。

 

正月、ひな祭り、5月の節句の柏餅などいつも餅がある

日本の行事行事はお餅が関連していることが多いですね。
ひな祭りも節句菓子は花見団子と桜餅だったり、5月は柏餅と粽(ちまき)、あとはお彼岸のおはぎも餅米ですね。
やはりお餅というのは、要所要所で関係している感じですよね。
今はあまりしませんが、棟上げ式のときは、お餅の中にお金を入れて撒いたりしました。
日本の文化とお餅は切っても切れない文化があると思います。
今はみたらし団子と『やじろ』という、串に挿してタレを付けたお餅ですね。
これが一番売れますね。
みたらしは、そんなに昔じゃないんです。
30年はやっていますが、秘伝というほどではありませんが、オリジナルのタレで、吉野の本葛を使ってとろみを付けて。
手間ひまかけて作っているので、日持ちはしませんが、本当に混じりけのないお米の味、お餅の味、それと醤油の味ですので、シンプルですがとても美味しいと言っていただき、みなさんにお買い求めいただいております。

 

賀県と秋田県の米をブレンドして使っている

餅米の中にもブランド米と言われるものがあります。
ウチで使っているのは佐賀の『ヒヨクモチ』という、普通の餅米より柔らかいもの、それと秋田県のお米をブレンドして使っています。
柔らかいだけだと歯ごたえがなかったり、鏡餅をつくるときに高さが出ないんですよね。
だからちょっとブレンドして、固いお餅と柔らかいお餅を混ぜて、ちょうど良い感じにして使っています。
柔らかいだけだと、食べる分にはとても良いのですが、味がのっぺりした部分が出てきてしまうので、固いお米や美味しいお米を混ぜて、コシ高の鏡餅を作っています。
今の餅米に決めるときもサンプルをいただいて、搗いてみて食べてみたりとか、親戚が農家なので、そこで作ったお米を使ったりとか。
やっぱり昔に比べると、餅米の味が落ちてきたという部分がありますね。
昔のお米は固いんですけど、美味しいんですよ。
それがだんだん、歩留まりが悪いため品種改良がすすみ、歩留まりの良い品種になってくると、少し味のほうが犠牲になったりしています。
その中で、少しでも味の良いお米を探して、ミックスしてブレンドして搗いて、お餅を作っています。

 

統を守りつつ、時代にも合わせて作っていく

お店を継いで二十数年。
伝統を守りつつも、時代にも合わせないといけないと思います。
いつまでも古いままじゃいけないですし。
変えちゃいけないところは変えない…そのあたりがわかっていれば良いのかな、と、私は思います。
はじめはいろいろなことにチャレンジしてみたり、新しいお菓子を考えて作ってみたりしたました。
しかし行き着く先はシンプルな、昔からのものをお客様は好まれるようです。
そういったお菓子になってきましたね。
これといってはありませんが、小さな頃から見ていますから、そういうふうな作り方を見て学んだという感じで、生活が『餅屋』になっていました。
小さな頃から手伝っていましたし、手伝わないとお正月を迎えられないくらいだったので、それはもう、ウチのおばあちゃんの代からずっと見てきました。
それが引き継いだもの、という感じですかねえ。

伝統を絶やさないというか、自分が生きているあいだは店頭に立って、お客さんとお話をして、昔のものを伝えていきたいです。